平成15年12月17日
経済産業省 経済産業政策局 産業組織課 御中
日本大学法学部商事法研究会
代表 坂田 桂三
「『人的資産を活用する新しい組織形態に関する提案−日本版LLC制度の創設に向けて−』に関する意見募集」に対する意見の提出
経済産業省産業組織課は、平成一五年一一月「人的資産を活用する新しい組織形態に関する提案−日本版LLC制度の創設に向けて−」(以下、「本提案」という。)と題する書面を、同省ホームページのパブリック・コメントのに掲載して意見を募集した。日本版LLC制度は、法務省民事局参事官室よりパブリック・コメントの手続に付されている「『会社法制の現代化に関する要綱試案』に関する意見募集」(以下「要綱試案」という。要綱試案については、商事法務号(平成一五年)〜頁に掲載されているので、参照されたい。)の第六部の1.「新たな会社類型」としても提案されているところである。
そこで、日本大学法学部では、両者を併せて検討すべく、平成一五年一一月二九日および同年一二月一三日に商法の研究者等により構成される商事法研究会を開催して、検討した(本研究会の参加者は、次のとおりである。一一月二九日は、坂田桂三(教授)、西川昭(教授)、石山卓磨(教授)、松嶋隆弘(助教授)、大久保拓也(専任講師)、益井公司(専任講師)、山口和男(弁護士)、山田治男(弁護士・前教授)、松井一郎(前教授)、坪川弘(横浜商科大学教授)、中村良(非常勤講師)、小菅成一(東海大学非常勤講師)、吉田夏彦(国士舘大学非常勤講師)、田代有嗣(弁護士・前教授)、高岸直樹(校友・税理士)、松嶋康尚(校友・税理士)および大学院生。一二月一三日は、坂田桂三(教授)、西川昭(教授)、松嶋隆弘(助教授)、大久保拓也(専任講師)、益井公司(専任講師)、山口和男(弁護士)、山田治男(弁護士・前教授)、松井一郎(前教授)、坪川弘(横浜商科大学教授)、田邊宏康(専修大学教授)、中村良(非常勤講師)、小菅成一(東海大学非常勤講師)、吉田夏彦(国士舘大学非常勤講師)、田代有嗣(弁護士・前教授)、松嶋康尚(校友・税理士)および大学院生。)。
ここに本提案に対する、本研究会の意見を送るものであるが、参考までに、要綱試案に対する本研究会の意見(なお、パブリックコメントに対する〆切前の暫定的なものであることを、あらかじめ了解されたい。)を併せて送付する。
本文
本試案は、日本版LLCを認めようとするものであるが、かかる制度の採否は、有限会社の廃止と密接にかかわる問題であると思われ、有限会社の廃止の是非と併せて検討しなければならないものと思われる。
出資者の有限責任が確保され、会社の内部関係については組合的規律が適用されるというような特徴を有する日本版LLC制度といっても、有限会社とその本質において異なるものとは思われない。そもそも「出資者の有限責任が確保され、会社の内部関係については組合的規律が適用される」会社形態として、有限会社そのものだからである(有限会社と異なる点は、日本版LLC制度では全くガバナンスをなくすことができることくらいではなかろうか。)。
要綱試案は、有限会社と株式会社を一本化する過程で、「譲渡制限があり、かつ、取締役会が設置されない株式会社」という類型の中に、従来の有限会社形態をはめ込み、有限会社を廃止する意向のように思われる。このように規定が一本化されると、否応なく株式会社的規律が適用されざるを得ないので、それとは別に緩やかな会社類型を認めたいという実務上のニーズはわからないわけではない。
しかし、有限会社を廃止して、新たに有限会社と大差ない会社類型を作るのであれば、法制度設計の在り方として極めて疑問であるといわなければならない。
結局のところ、日本版LLC制度に対する実務上のニーズは、おそらくパススルー税制など税務上のメリットを享受するためということに尽きるように思われる。税制と実体法とが密接不可分な関係にあることは認めざるを得ないとしても、このような税制上のニーズにより、法人制度という法制度の根本がゆがめられることがあるとすれば、極めて憂慮すべきであると考える。
したがって、本研究会としては、日本版LLCの採否にあたっては、かかる事情を考慮の上、平成17年に予定される会社法典の制定と併せ、くれぐれも慎重に検討すべきであると考える。