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「公示催告手続の見直しに関する中間取りまとめ」に対する意見書



平成15年11月22日

法務省民事局参事官室 御中

日本大学法学部民事法・商事法研究会

「公示催告手続の見直しに関する中間取りまとめ」に対する意見書

法務省民事局参事官室は、「公示催告手続の見直しに関する中間取りまとめ」を作成し、当該中間取りまとめに関する意見募集を同省のホームページ上にて行った(意見募集期間は平成15年10月24日〜平成15年11月25日)。
日本大学法学部では、これに応えるべく民法、商法、民事訴訟法など関連分野の研究者及び実務家により構成される民事法・商事法研究会を平成15年11月9日(日)に開催し、当該「中間取りまとめ」を検討した。民事法・商事法研究会の出席者は、田代有嗣(前本学部教授・弁護士)、福田弥夫(武蔵野大学教授)、田邊宏康(専修大学法学部教授)、高岸直樹(税理士)、松嶋康尚(税理士)、山川一陽(本学部教授)、遠藤功(本学部教授)、永田誠(本学部教授)、岡島芳伸(本学部助教授)、松嶋隆弘(本学部助教授)、清水恵介(本学部助教授)、小田司(本学部助教授)、益井公司(本学部専任講師)、大久保拓也(本学部専任講師)、大久保輝(本学院生)、鬼頭俊泰(本学院生)の16名である。また、山田治男(本学部非常勤講師・弁護士)からは、当研究会宛に文書による意見を頂いた。
以下に掲載するのは、「公示催告手続の見直しに関する中間取りまとめ」に対する当研究会の意見を概括したものである。
なお、当研究会の意見内容の要約と記録は、松嶋隆弘、小田司が担当し、その際、遠藤功の若干の補筆を得た。

公示催告手続の見直しに関する中間取りまとめ

(注)「…条」とあるのは、仲裁法附則第9条による改正後の公示催告手続ニ関スル法律(明治23年法律第29号。以下「現行法」という。)の条文を指す。

第1 公示催告手続の開始
1 公示催告手続の管轄
(1) 一般の公示催告手続の土地管轄(第1条関係)
 公示催告手続の土地管轄については、現行法の下では、失権の対象とされる請求若しくは権利を有する者の普通裁判籍の所在地又は当該請求若しくは権利の目的物の所在地(当該請求又は権利が登記又は登録に係るものであるときは、登記又は登録をすべき地)が基準とされるとの考え方が採られている(第1条において準用する民事訴訟法第4条第1項、第5条第6号、第13号等)が、この取扱いを維持するものとする。

(注)現行法の原則的規定に基づく公示催告手続が用いられる法律関係としては、例えば、不動産についての登記に係る権利その他の登記又は登録に係る権利に関し、登記(登録)義務者の所在が不明であるため登記(登録)の抹消の手続をすることができない場合(不動産登記法第142条第1項等)が挙げられる。
〔意見〕
一般の公示催告手続の土地管轄について、現行の取扱いを変更すべき特段の理由はない。したがって、提案に賛成である。

(2) 有価証券の無効を宣言するためにする公示催告手続の土地管轄の特則(第779条関係)
 有価証券の無効を宣言するためにする公示催告手続の土地管轄の見直しの必要性について、どのように考えるか。

(注)現行法では、証書の履行地が最も当該証書に関する法律関係に密接な関係を有することから、証書に履行地が表示されているときはその履行地を管轄する簡易裁判所(第1順位)、証書にその履行地を表示していないときは履行地となるべき発行人が普通裁判籍(住所、居所)を有する地を管轄する簡易裁判所(第2順位)、その裁判所もないときは発行人が証書を発行した当時普通裁判籍を有していた地を管轄する簡易裁判所(第3順位)という段階的な定め方がされている(この土地管轄は、専属管轄である。)。これに対しては、管轄の定め方が硬直的であるとの指摘がある。
〔意見〕
土地管轄を段階的に定めることに反対ではない。しかし、近時、知的財産権訴訟、大規模破産事件につき、管轄を土地管轄のない裁判所に認めている立法動向などを斟酌すると、公示催告手続の土地管轄を専属管轄とすることが十分合理性を有するのか疑問であり、また、公益的理由も慎重に検討されるべきである。したがって、専属管轄とすることについては消極である。

2 公示催告の公告の方法・期間
(1) 一般の公示催告の公告の方法・期間(第766条、第767条関係)
公示催告の公告の方法・期間として、裁判所の掲示場への掲示及び官報への掲載を2か月以上行うものとする。
〔意見〕
 提案に賛成する。特に反対すべき理由がない。

(注1)公報への掲載による公告は、廃止するものとする。
〔意見〕
 実際、公報への掲載による公告は行われていないのであるから、廃止することに賛成である。

(注2)現在、インターネット版の官報については、1週間分の官報が無料で閲覧可能とされているのみならず、毎月一定額の支払により、官報の記事を特定の事項(ある手形の振出人名や手形番号など)から検索することで、例えば、ある有価証券が公示催告手続の対象とされているかどうか等を確認することも可能な状況になっている(独立行政法人国立印刷局のホームページhttp://kanpou.npb.go.jp/を参照)。
〔意見〕
 現在、インターネットを利用することにより官報の情報検索を行うことは可能となったが、すべての人がインターネットを利用しているとはいえず、また、インターネットによる官報情報検索サービスは有料であるということを考慮すべきである。民事訴訟における公示送達は、裁判所の掲示場への掲示により行われているのであるから、公示催告の公告についても、掲示場への掲示、官報への掲載により行う必要がある。
 なお、将来的には簡易裁判所の電子公告についても検討すべきであるとの意見があった。また、独立行政法人国立印刷局のホームページによる官報掲載記事公開を制度化して、閲覧を無料にすることを検討すべきとの意見がある。

(2) 有価証券の無効を宣言するためにする公示催告の公告の方法・期間の特則
ア 公示催告の公告の方法についての特則(第782条第2項関係)
証書の無効を宣言するためにする公示催告手続における特則としての裁判所の所在地にある取引所における公告(第782条第2項)を廃止するものとする。
〔意見〕
 立法当時と状況が異なっており、取引所における公告を廃止することに賛成する。裁判所の掲示場への掲示と官報への掲載で十分である。

イ 公示催告の公告の期間についての特則(第783条関係)
第783条が定める期間の下限(6か月)を短縮することについて、どのように考えるか。仮に、短縮するとした場合には、どの程度の期間を下限とすることが適当か。

(注1)公示催告期間の下限については、権利の届出の機会を確保することにより有価証券の所持人の保護を図る観点から定められるものであるが、例えば、約束手形・小切手の場合に6か月では長すぎるとの指摘がある。ドイツでは、小切手について公示催告期間の下限が特に2か月と定められている(小切手法第59条第1項第2文)。
〔意見〕
 代表的な有価証券である約束手形について、振出日から満期までの期間が3か月程度のものが多いという実情に鑑み、期間を短縮することに賛成である。
通常の公示催告期間の下限は、2か月(第767条)とされているから、有価証券についての公示催告期間の下限についても、通常の場合と同様に2か月とすることが望ましい。

(注2) 公示催告期間の上限についても、現在では裁判所が適当な期間を設定することが許されており、規定上はどんなに長い期間でも設定することが許されていることについては、どのように考えるか。例えば、ドイツでは、公示催告期間の上限は1年とされている(同法第1015条第1文)。
〔意見〕
 有価証券の発行形態が多様化していることを考慮すれば、公示催告期間の上限を定めずに、裁判所が権利の内容に応じて個々に公示催告期間の上限を決定するものとする現行の規定を維持すべきである。
〔補足〕
 上記(注2)において、「ドイツでは、公示催告期間の上限は1年とされている(同法第1015条第1文)」としているが、C.H.Beck社の『ZPO 2003』によれば、ドイツ民事訴訟法第1015条第2文ではないか。

(後注)有価証券の無効を宣言するためにする公示催告手続については、この手続が有価証券上の権利に係る義務者とは無関係に進められるので、義務者の地位が不安定である(除権判決がされた後に有価証券の所持人に対して義務を履行しても免責されない)という指摘があるが、これに対する何らかの手当ての要否について、どのように考えるか。また、申立人(有価証券の喪失者)の公示催告手続の進行中における利益の保護に関し、権利の届出人(有価証券の所持人)の保護の観点をも踏まえ、見直すべき点はあるか。
〔意見〕
(後注)については、本研究会で、議論がさかんに交わされ、重要な論点となった。
1.前段部分
 この点について、証券上の義務者が証券所持人に支払ったときは、民法第478条の債権の準占有者に対する弁済となることを明文化して保護するべきであるとする意見と、民法第478条の解釈に委ねれば足りるとの意見が出された。さらに、第3の見解として、民法第478条よりもむしろ手形法第40条第3項や民法第470条が適用ないし類推適用される形で処理すべきとする意見がある。第3の見解は、商事法専攻者に支持者が多かった。また、本中間取りまとめが、有価証券としてどのようなものを想定しているかにより、義務者保護に関する適用法条が変わってくるのではないかとの指摘もあった。
2.後段部分
 この点については、証券義務者に供託と異議提供金の二重負担をさせるべきではないとの理由から、証券上の義務者が商法第518条の規定に基づき供託したときは、その供託を理由に証券の支払を拒絶しても不渡事由にならない旨を手形交換所規則に明文化すべきであるとの意見があった。ただ、この意見に対しては、手形交換所や手形小切手の電子化の動向も併せて検討されるべきであるとの指摘もなされた。

第2  除権の裁判
1 失権の効果を生じさせるための手続の構造(第769条第2項、第3項関係)
公示催告手続全体を決定手続とし、除権の裁判の形式も、現行法の判決から決定とするものとする。

(注)ドイツでは、公示催告手続については、民事訴訟法に規定されており(第946条から第959条まで)、これが現行法の母法となったものであるが、その性質は非訟事件であるとするのが多数説である。
〔意見〕
 公示催告手続は、実体的権利義務関係の確定を目的とするものではなく、失権の効果を生じさせるための手続であり、本質的に非訟事件と解されるので、公示催告手続全体を決定手続とすることに賛成である。

2 公示催告手続の申立てについての審理・判断の方式(第765条第2項、第776条関係)
公示催告決定の審理の在り方について、常に申立人の出頭を要する公示催告期日(第771条、第772条)を廃止して、公示催告決定において権利の届出の終期を定めるものとし、1の決定(以下「除権決定」という。)をするための要件の審査については、審尋(書面審尋又は当事者・参考人審尋)によるものとする。
〔意見〕
 公示催告期日を廃止し、公示催告決定において権利の届出の終期を定めることとしても、手続保障に欠けることがないので、提案に賛成するというのが研究会の多数意見である。
これに対して、公示催告期日は、権利の届出の期間を定めるものであり、権利の届出がされたときは、公示催告期日において権利の届出の適法性等について審理するものとする現行の規定を維持すべきであるとの意見があった。

(注1)公示催告手続を決定手続とした上で公示催告期日を廃止することにより、従来のように除権の裁判の申立てを口頭で陳述する必要はなくなることとなるが、更に公示催告手続開始の申立てをするほかに、改めて除権の裁判の申立てをすることを要しないものとすることについては、どのように考えるか。
〔意見〕
 公示催告手続を一連の手続と考えた方が、申立者に便宜有利であるばかりでなく、裁判所にとっても簡便な取扱いとなるため、改めて除権裁判の申立てを要しないものとすることに賛成であるとの意見があった。
これに対して、虚偽の申立て、または、善意取得と除権裁判との関係などが問題となることも考えられることから、公示催告手続開始の申立ての他に、除権裁判の申立ても必要であるとする現行の取扱いを維持すべきであるとの意見があった。
 公示催告手続開始の申立てと除権裁判の申立てを一本化すべきか否かについて、研究会の意見は分かれた。

(注2)請求又は権利の届出がされた場合には、申立人及び届出人が立ち会うことができる審尋期日及び審理の終結日を指定する(民事保全法第31条参照)ものとする。
〔意見〕
 請求または権利の届出がされる例は皆無であると思われるが、申立人及び届出人が審尋期日に立ち会うことができることで手続保障が図られるため、提案に賛成である。

第3  除権の裁判に対する不服申立て
1 除権の裁判に対する不服申立ての方式(第774条第1項、第2項関係)
除権の裁判に対する不服申立てについては、独立の不服申立ての手続とし、決定手続とするものとする。
〔意見〕
 公示催告手続自体を決定手続とするのであれば、不服申立ての手続も決定手続とすることに賛成である。手続の簡素化の点からも、提案どおり決定手続とすることに異議はない。

(注)現行法では、除権の裁判である除権判決に対する不服申立ての手続は特別の訴えの形式を採っているが、この不服の訴えは上訴ではないものとされている。
〔意見〕
 現行法第774条第1項による上訴の禁止を維持すべきであり、除権裁判に対する不服の申立方法として、不服の訴えを認めることに賛成する。ただ、準再審手続で準用される民事訴訟法第338条第1項第5号の場合について、有罪の確定判決を必要としないことはもとより、当該準再審手続審の裁判官の心証に委ねてもよいのではないか、という意見が出された。

2 除権の裁判に対する不服申立ての手続の在り方
除権の裁判に対する不服申立ての手続を決定手続とすることに伴い、不服申立ての事由など不服申立ての手続に関し、見直しをすべき点はあるか。
〔意見〕
@  現行法第775条第1項の不服申立ての期間(原告が除権裁判を知った時から1か月)は、維持すべきであるが、紛争を短期間で打ち切るべきとの観点から、同法第2項の除権裁判の言渡しの日から5年以内は、除権裁判の言渡しの日から3年以内に短縮すべきである。
A  不服申立手続の管轄裁判所は、不服申立てが準再審の性質を有することから、除権裁判をした簡易裁判所とすべきである。
B  除権裁判を信頼した者を保護すべきことから、除権裁判が取り消された場合、除権裁判を基礎として義務を負担する者がした給付は、給付時に除権裁判が取り消されたことを知っていた(重過失の場合を含む)ときを除き、不服申立をした者その他の第三者に対してもその効力を失わないものとするドイツ民事訴訟法第1018条第2項と同様な規定を設けることが望ましい。

〔末尾〕
 近年、有価証券というシステムに関しては、@株券が株券失効制度の対象となり、除権判決の対象から外れたこと、A社債等振替法にみるような電子的振替システムが制度化されたこと、B商法改正により株券不発行制度が導入されようとしており、公開会社の株式については、社債等振替法と類似の振替システムが予定されていること、C手形・小切手の電子化が議論されていることなど、大きな変更がなされつつある。これらの議論の状況によっては、除権裁判の対象たる「有価証券」の中身が問われることになりうるため、これらの動向にも注意を払い、公示催告手続の見直しについて、その合理性と公益性の観点を吟味しつつ、さらに、時代と取引社会の要請に適するよう検討すべきである。


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